RIP Chris Squire

英ロックバンド、YESの創設者にしてベーシスト、ソングライターおよびリード/バックグラウンド・シンガーの、Chris Squire氏が亡くなったというニュースが。

わたくしBabySnakeの、ベース部門の、もっとも影響を受けた、尊敬する方であります。

「YESといえば」で、こりゃないだろう、かもしれませんが、私が観に行ったライヴでは、ソロのコーナーで、「Fish」と、この曲のリフで走り回るクリスがとても印象に残っていて、白血病と闘っていると知ってから、応援のつもりでよく弾いていました。

以下、Facebookでの友達とのやりとりでのわたしのコメントですが、思っていることです。

「クリスと加部正義さんだけが許される世界というか、ゲディとはまた違うリードベースの世界。ドライヴィングで硬質なベースラインというかリフに、モジュレーションエフェクトでウネリを加える。うっかりすると楽曲をぶち壊してしまうようなアイデアが、こうもカッコよく決まるとは…です」

もちろん、YESといえばクリスであり、クリスによって編成される音楽がYESとも言えるのですが、ソロ・アルバムもすごく好きなんですよね。

クリスといえば…

まず、その手から作られるサウンド。リッケンバッカー4001(レコーディングではFenderとか、1980年代には映像やライヴでも、いろんなベースを使っています)の、おそらくめっちゃブリッジ寄りをゴリゴリと、指ではなくフラットピックで弾(はじ)き出す、トレブリーで芯のつまった独特の音。これはクリス本人は、グレッグ・レイクのピック弾きの音にインスパイアされたと言っていますが、たとえばスティングは、自身ののベース・プレイにかんして「いつもブリッジミュートして(柔らかい音を出して)いるよ、アンチ・クリス・スクワイアさ(笑)」といっているくらい、あの硬質の低音は、クリスのシグニチャー・トーンだということではないでしょうか。

そして、さらに特徴的なサウンドメイク。ギター小僧的にやはり気になるのは、彼とともに有名になった(そして彼とそのフォロワーしか使っているのを聞いたことがない)、Maestro製の「ブラスマスター」という、ベース用のディストーションユニットです。

ディストーションというかは、ファズに近いようなものらしいですが、そもそもの用途としてはエレキベースの音に、チューバのようなブリっとしたサウンドを加えるためのものらしいのですが、とてもじゃないけど、そういう用途で使われてはおりません。BIG MUFFでもええんちゃうの?くらいな激しい歪みです。

さらに、彼の愛器リッケンバッカー4001は、ステレオ・アウトプットになっていて、トレブル成分(リア・ピックアップからの出力)と、バス成分(フロント・ピックアップからの出力)を別々のアンプ、キャビネットから出力させ、たとえ前述の歪みや空間系のエフェクトをたっぷりかけた場合でも、かならずドライなベースの音がミックスされている、というのが特徴です。

そういえば、ポール・マッカートニーも、ジョージの「Think For Yourself」でベースにファズを使っていますが、ムチャクチャ音が痩せているので、普通のベースもダビングしてましたね。

このステレオ出力アイデアは、ビリー・シーン先生もずっと継承しておられます。

そして、サウンドを上回るそのプレイ。時に楽曲の屋台骨に、時にガツンとド派手に前にでてくるそれは、メロディにカウンターとして存在するベースライン、コードを動かさずにベースを動かす、その逆もまたしかりな部分、ギターとのユニゾンをやったかと思えば、まったくちがうところへ離れていき、また戻ってきたり。バロック音楽のチェロを学んだジャック・ブルースは、バッハというか対位法的な低音をロックにもたらしましたが、クリスのそれはもっとえげつないのですが、絶妙な出し・引きとダイナミックレンジで、一種、絵画的なものを音楽に与えていると思います。

なにより、「ベースって面白い」「ベース弾いてみてえ」と思わせる、その魅力は、ビリー・シーンやゲディ・リー、ジョン・エントウィッスルをわずかに上回るくらいではないかと思います。ええ、個人的な意見ですが。

で、彼のすごいところは、その千変万化のベースプレイを繰り出しながら、歌をうたう、ところでもあります。しかも時たまコーラスとかではなく、メロディ部分をリードシンガーと延々ハモっています。完全にリードシンガーのゲディもすごいですが、さすが、かのパトリック・モラーツもボヤくほどの「練習とミーティングの鬼」YESの中枢神経、といったところですか。

個人のハナシで恐縮ですが、ひとたび私がベースを手に持てば、やはりなってみたいのは、クリス・スクワイアか、グレッグ・レイクなんですよね。

つか、Logic Proにはいっている「Prog Rock Bass」っていうサウンド、まんま、クリスかグレッグかどっちかの音ですよアレ。

本人は、そこまでトラディショナルな人間とは思っていなかったとも思いますが、僕のなかで、ブリティッシュなもの、のひとつの塊でもありました。

どうか、安らかに。おおきに、クリス。お疲れ様でした。

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