パラレル宇宙論と無限の「いま」

みんな大好き、科学雑誌Newtonの、別冊「Newton パラレル宇宙論」を、Kindleにてダウンロードして読みました。

NEWTON別冊 パラレル宇宙論

当方、自然科学大好きで、Newtonとか、小学校の頃、いちじ公文式にかよっていたので「コペル21」とか、めっちゃ読んでおりまして、さらに20代の頃は、ダークマター云々をアテに、連夜酒場で盛り上がるといったようなヘンな傾向がありました。

とはいえ、最近はあまり宇宙の科学は追いかけてなかったのです。なんででしょう。気が遠くなって眠れなくなるからでしょうか。歌を忘れたカナリアのようです。歌詞を書くのに最適な、美しいモティーフに満ち満ちているのに。

余談はさておき、これが滅法界おもしろかったのです。

前述のとおり、宇宙にかんしては、S.ホーキング氏というか、ベイビーユニバースあたりでアタマがストップしていたので、「観測可能な宇宙の限界(ビッグバンから138億年の間に地球に到達した光によって導きだされる球体)」と、インフレーション理論によって導きだされる、宇宙空間の「無限」によって、ありとあらゆるものが並走する「パラレル宇宙論」は、非常に刺激的で、示唆に富んでいる内容に思えました。

詳しい説明は、本編をぜひお読みになってほしいのですが、とにかくざっと説明すると、我々の居る天の川銀河や、おとなりのアンドロメダ銀河を含む宇宙(レヴェル1マルチヴァース:上記の、ビッグバンから138億年の間に地球に到達した光によって導きだされる球体)、と同じ規模の宇宙がいくらでも存在し得る、ということ。さらにそれらを内包する球体の構造物(これもまた宇宙:レヴェル2マルチヴァース)も、無数に存在し、さらにそれらを内包する構造物(レヴェル3マルチヴァース)…と、とんでもないスケールの、(M.テグマーク博士いわく)マトリョーシカ人形、私の感覚でいえば、HTMLのDOM(文書構造)のような世界が広がっている、という理論であります。

さらに、この構造的な理論とあわせてぶっ飛んだのが「永久インフレーション理論」です。

インフレーションとは、物価の高騰ではなく、宇宙誕生直後におきた、空間の急激な膨張で、物質と物質の距離(空間)ものすごい速度、光より速くひろがり、遠ざかっていく現象で、私達の宇宙では約138億年前に終了しているのですが、宇宙と宇宙との間のような、取り残された空間で、この急激な広がりはどんどん繰り返されている、というのが「永久インフレーション理論」なのです。

こうなるとタイヘンで、宇宙空間というものは従来考えられていたよりもずっと大きなもので、「無限」である可能性がある、ということです。

科学者が、おっしゃるんですよ、「無限」と。バーン!ここで何もかもが弾けるのです。

「無限」の実在は、シュレーディンガーの猫がワンと鳴くことも可能にするのです。

そこには「実在したかもしれない現実」が、「実在する」ことの確信が内包されています。

私達は、いわば無限の分岐の結果として存在していますが、たとえば、私がサイコロを100回振って、100回とも「1」の目を出すのは不可能に等しいですが、「100回振る」という行為に「無限にチャレンジできる」となったら、いつか達成できるのです。なんたって無限だから。

もし、私が女性として生まれたなら、というハチャメチャな世界も「無限」の中には存在するのです。なんたって無限ですから、そういう世界が「実在する」ということになります。そう、すべての分岐は「ありえる」「存在する」ということになります。歴史に「IF」はないが、宇宙にはあるのです。ドラえもんの、ひみつ道具「もしもボックス」です。

この永久インフレーション理論、眉唾だと思われるかもしれませんが、巻末のインタビューでテグマーク博士がこのように言っています。

「しかし今までに発表されたほぼすべてのインフレーション理論において、インフレーションは永久だと示唆されています。永久でないインフレーション理論を構築するのはとてもむずかしいことです。特別なモデルをつくって、そこから特別な方法を駆使して、永久でないインフレーションにたどり着くというのは可能です。しかし、その種のモデルは美しくないと考える研究者が多いのです。それはまるで、その目的のためだけにモデルをつくりだしたようなものなのです。」

ゲー、ほんとかよ〜と。

で、そののち、僕にとって衝撃的な発言が掲載されています。以下、やりとりの引用。

Newton「この場合のパラレル宇宙(枝分かれした世界)は”どこに”存在しているのでしょうか?」
テグマーク「ある意味、「ちょうどここにある」といえます。人生の物語を本の1ページにたとえるなら、たくさんのことなるページ(ことなる人生)が積み重なっているようなものです。」
テグマーク「たとえば「電話に出るか、出ないか」のどちらかをえらぶ場合、この電話は非常に大事な電話かもしれません。誰かからのデートの誘いで、電話に出たおかげで思ってもみなかった人と結婚することになるかもしれません。電話に出なかったら、人生はそうならずにまったく別のものになっていたかもしれません。多世界解釈によれば、この選択肢の両方が現実です。」
テグマーク「これらは遠くの宇宙で起きたのではなく、まさにここで起きたことです。未来は、このようなことになる可能性のすべてをもった、枝分かれした木のようなものなのです。」

-引用ここまで-

どうですか?無限の宇宙。気が遠くなるスケールの宇宙のすべてが「ちょうどここにある」。

これは…まるで仏教ではないか…と。サイエンス・オン・ジ・エッヂに、圧倒的な禅的世界(笑)。

すべては、「いま、ここ」で起こっていると。なんだかケムにまかれているようなテグマーク博士の解説ですが、僕には衝撃と、ああ、やはりそうなのか、という2つの心の動きがあった「到達点」のお話…。

パラレル宇宙論、マルチユニヴァースを感じるには、「いま、ここ」にフォーカスする、と。あらゆる時間が「いま」であり、あらゆる場所が「ここ」である、と、(いまんとこの)最新の科学が導き出しているようです。

Newton別冊、上記わたしのケッタイなスピリチュアル解釈はおいといて、ほかにも最新(最近?)の宇宙にかんするお話がたくさん載っていて、モロに気が遠くなりそうですが、でもやはり、ものすごく面白かったです!基本、Newtonの記事って、なんとなく個人的に「尻切れトンボ感(ごめんなさい)」を感じることも多いのですが、これはそんな事もなく、とってもオススメです。

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