その素材

少し前に、神奈川県の某所にて、リアルガット(動物の腸から作った)弦のギターを弾かせていただきました。

ヴァイオリン等に使われる、シープガット(羊腸)ではなく、ビーフ(牛さん)とのことで、1-3弦がリアルガット、4-6弦が絹糸にシルヴァーワウンドということでした。

なんだか、動物を屠った素材を使っているという事に、一瞬の躊躇があるものの、それは木材とて生命をいただいて使っているのだから、「覚悟が足りない」というような事なのかな、などとひとりで心のなかでぶつくさ言いながら、初めて(ナイロンではない)ガット弦に触れました。

すごかったです。

まず、ナイロンとの比較でいうと、ナイロン弦が、ムチムチ、パッツリと「茹でたてスパゲッティ」みたいな感じであるのに対して、リアルガットの方は動物性の切り干し大根というかカンピョウというかなんというか「干物」に近い。ナイロンに感じる一種の反発はなく、肌に触れているような感じ。

これは、なんというか表現の根本が変わっちまわーなー、というような感じで、ナイロン弦が悪いとかそういう事ではなくて、元来がこういうもの(リアルガット)であったならば、やはりナイロンもその「代替」であり、ギターというものが形をなした時の素材がまたリアルガットであったならば、当時完成された状態のバランスというものは、楽器製作者さんだけでなく、演奏者もまた触れておいて損はないのでないかと。

とにかく、指が吸い付いていく感じで、なんとも心地よい張りと深い音色。何回か弾けばまた印象が変わるかもしれないけれども、初めての印象は音色よりもまずそのやさしい手触りで、弾いた時もなんか、ボディやネックに音が染みこんでいくような、そんな感覚がやはり際立って手の中に残りました。

緊張してロクな試奏になりませんでしたが、とにかく感動の数十分間でした。普段は「ディマジオのピックアップの巻き数がどうだ」とか「1176のエミュがどうだ」とかな人間に、なんとも夢見心地で素敵な時間をありがとうございました。そして、死してなお美しい音色となったモーモーくんや、メーメーさんたちにも感謝。

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