先月、わたくしはロックとちがうジャンルの演奏会に参加いたしまして、ギター以外を演奏したり、事もあろうに歌まで歌ったりしたのでありました。
で、この、太鼓を叩いている曲ですが、タイトルが「Prince Rupert March(ルパート王子のマーチ)」であります。
↓ではLes Witches の素晴らしい演奏でドーゾ↓
メドレーになっている前半の曲がそれです。Witchesいいですよー。気に入ったらCD買ってみてください。僕は買いました。
ルパート王子(カンバーランド公ルパート)は、実在の人物で、神聖ローマ帝国の選帝侯の息子(だけど彼はイングランド人)であったので、ルパート王子の呼び名で通っていた軍人で、イングランド王チャールズ1世の甥で、王政復古後のチャールズ2世の従兄弟にあたる。
とにかく若い時にドイツの30年戦争に従軍したのを皮切りに、いつも戦場のど真ん中(と捕虜生活)を生きてきたような鉄骨入りの武人だったようで、17c当時すでにこのようなテーマソングができていたという事ですね。彼はオリヴァー・クロムウェルの仇敵だったので、アイルランドの人が作ったのでしょうか。
で、コレ、知ってる人は「はて、ああ、アレはコレではないのか?」てなことになるのですが。
そう、実は、わたくしの大好きな King Crimson 、その40余年の歴史の中でもブッちぎりに地味なアルバムとされている Lizardという作品の中に、その名も「Lizard」とタイトルナンバーになっている組曲があります。そのドあたまが、なんと「Prince Rupert Awakes(ルパート王子のめざめ)」という曲で、まさに遠いトコロから僕の活動はリンクしていて、とても非常に感動的なのです。
では、是非聴いてみてください。
…。
……。
ん。
そう、あれでしょ?
僕ら世代にはあれなんです。アレ。
コレって、アレに似てませんか?
もとい、アレってコレに似てませんか?
ま、非常に有名なお話なんですが、…やれやれ。
しかし、我々はずっと小さい時からクリムゾンに親しんでおったのだなぁと。
まぁ、それはさておき。
この「Lizard」というアルバム、ジャケ絵に象徴されるように、もともと、ルネサンスというか、中世ちっくな世界観を持ったアルバムなんですが、この「ルパート王子のめざめ」からの組曲は、ヴォーカルにYESのジョン・アンダーソンを据え、非常に幻想的かつ美しい音楽世界を展開しています。なので、「スキッツォイドマン」をイメージすると激しく物足りないのは当然なのですよね。
残念なことに King Crimson の作品としては、話題にのぼることすらほとんどないような不人気アルバムですが、やはり緻密で素晴らしい音楽だと僕は思っています。
で、歌詞の中に再三出てくる「ガラスの涙(Prince Rupert’s tears of glass)」ですが、コレは実在する「ルパート王子のしずく」という特殊なガラスとひっかけています(たぶん)。熱したドロドロのガラスを水の中に落とし急冷したもので、オタマジャクシ型の頭の部分はハンマーで叩いても壊れないくらい頑丈なのに、尻尾の部分を割ると全体が砕け散る、という奇妙な性質をもっています。コレの生成実験の時にルパート王子が立ち会ったのでこの名がついたそうな。なんかうまい歌詞ですね、さすがピート・シンフィールド。
しかし、「ルパート王子のマーチ」って、そのまま彼を称える内容ではなくて、案外、議会派の人々が彼を揶揄する意味合いの音楽だったりして…イギリスって、そういうのありそうだ…。